待合室124号より

 

 H24年度医療保険・介護保険同時改定について見る


 介護保険が出来て12年、何回かの改定がおこなわれたが、今年度は久々の診療報酬と介護報酬の同時改定がおこなわれて、改めて課題がみえてきた。去年3,11東日本東北大震災教訓から、いつ想定外災害、自然災害が我々の生活を襲うかもしれない中、我々は安心安全の未来社会の創造のために要介護者、要支援者の生活を守り支援する医療保険介護保険の動向をしっかり見定めておく必要がる。


まず今年の診療報酬改定のポイントは1、充実が求められる分野の適切な評価としてがん医療の充実、認知症医療の促進があげられています。認知症については、海外ではすでに認められていた待ちに待った認知症の新治療薬3剤(リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン)が日本で新しく認可を受け アリセプトと並んで認知症の新時代の幕が開いたことです。回想療法、センター方式 パーソンドケア等々認知症ケアの充実拡大とあいまって、国民的関心を生んでいます。ポイント2は、患者がわかりやすい、安心安全での生活の質にも配慮した医療の実現として、退院支援の充実、患者の相談体制充実あげています。

 退院時カンファレンスとしては病院とかかりつけ医に加えケアマネ、、訪問看護師、ヘルパーさん等介護サービス提供者が集まり、病状を把握し退院してからの療養の仕方を確認する事は有意義なことです。ポイント3は医療機能の分化と連携等をとおして質が高く効率的医療の実現 病院と病床の機能分化、外来診療の役割分担 在宅医療の充実などがあげられています。ポイント4は後発医薬品の使用促進等うたっています。そして有床診療所の緩和ケア、有床診療所のターミナルケア等に加算がつけられています。(医)啓友会はめぐみの啓友クリニックに有床診療所をもっており、在宅援助の為のベッドと位置付けショート機能、緊急避難機能、肺炎やOPE のない腰痛膝痛等で機能低下した人の生活支援、治療、リハビリを行っています。地域の中での有床診療所の役割は重要になってきています。


次に介護報酬改定については高齢者の尊厳保持と自立支援という基本理念を推進するための基本的視点として3つあげています。1つはこれまでも進めてきた地域包括ケアシステムの基盤強化 2つは医療と介護の役割分担・連携強化3つは認知症にふさわしいサービス提供です。 認知症は現在250万人、2015年は400万に増加するといわれています。誰もが老いとともに避けることのできない認知症の増加、国を挙げての取り組みが問われています。医師会も認知症サポート医養成、認知症治療マップ作成等に取り組んで、診療所(かかりつけ医)と専門医の役割分担の明確化し、最初の窓口になるかかりつけ医の役割の大切さが強調されています。

 認知症を学ぶということは「老い」を「精神機能低下」をそして我々が「わけわからなくなったわ」と混乱した時の状況を客観的にとらえどう対処するかということを学ぶことになり、心身ともに健康で長寿を実現する道しるべになると考えます。認知症は我々一人一人のいずれゆく道来る道なのです。


このたびの介護保険の中で私が最も評価していることは2の医療と介護の役割分担連携が具体的に進んだということです。「痰の吸引」や「経管栄養」等医療処置などこれまでは認められていなかった医療的ケアが拡大されヘルパーさんができるようになったことです。ただ、これまでも難病の方、重度障害の方々は家族が中心となりボランティア精神、犠牲精神で先進的ヘルパーさんによって援助されてこられました。そうした人たちの先人の戦いがあってはじめて実現できたこと忘れないでほしいと思います。

 今回認められたことで重症の方の在宅療養が広がることになると思います。もちろん研修時間とか制限がありかえってやりにくくなったのではないかといわれる人もあります。ヘルパーさんが誰でもできるように研修してほしいと思います。特に在宅で看とりがすすめられ中、最終段階は痰が多くなり吸引が必要になることがあります。多くの介護士が参入しやすくなったことは評価できると思います。


終日人工呼吸器をつけて昼はヘルパーさんの援助はあるが夜はご主人一人で痰の吸引から呼吸器管理、食事介助もされて10年以上療養されている方もおられます。残念なことに夜間のヘルパー援助は実現できていません。誰もが当たり前に痰の吸引ができるようになればもっと重度の方の在宅も夜の痰の吸引も実現できると思います。その方はコンピューターを使いながら絵手紙を作成され、我々に生きる勇気と希望をあたえていただいています。

 どんなに大変でも皆で支えあえば家族の方の負担も軽減できます。私たちの力はたとえ小さくとも、一つ一つの心と力を寄せ集めれば乗り越えられないものはないのではないかとおもいます。これが地域の中の包括ケアです。ボラティアさん友人も含めて皆で持てる力を集め支え合うことが新しい時代の地域包括ケアと言えるのではないでしょうか

3人寄れば文殊の知恵」「チリも積もれば山となる」私が尊敬してやまない方々の闘病を皆の力で支えていきたいものです。